Victor GC-X1
はじめに電源を入れたときからアンティークで骨董品に通じるなにかを感じ取った。
ONにしたときのジ-ッという電子音がいつの時代だろう、
7年前の8mmビデオカメラのやうな、
さすが、ビクター、S-VHSビデオ世界一、あるいは世界二、ひょっとしたら世界三という
随一のこだわりに感銘を受けて彷彿とさせられるものでありました。
このカメラの売りに、ピクセルシフトモードという600万画素の高画質撮影機能がある。
NRモードやワイドレンジモードでは、様々な露光で何枚か撮影し
独自のアルゴリズムで処理して一枚の画像を作る。
何回もシャッターをきるわけだからどこかブレない場所に設置しての静止画にしか使えず、
厳選したシーンに使ってやろうという、意気込みを与えてくれますね。
色合いはDVメーカーということもあってビデオっぽく独特に不自然、
フラッシュではわざと白トビしまくりあえて色ノリをさせずにしている。
そこらにあるフジとかオリンパスとかニコンみたいに
あたりまえに横行している写真画質ではないのがまたそそる。
DVメーカーらしくバッテリーは専用で単三充電地などは使えないところがストイック。
DV撮影機についているような大きくてずっしりした充電機兼ACアダプター付き。
本体充電はできないがすぐに消耗する充電池を毎回々々入れ替えして
時間をかけてじっくり充電するのにはウキウキさせられますね。
また、扱いにくいことは特筆すべきことでありましょう。
というのも、このレスポンスの遅さにうんざりするよりも以前に、
一昔まえによく感じた郷愁を与えてくれるからです。
本体がすぐに熱を持ち始めて、冬に使っていたのですが、
けっこうこれが手を温めてくれるんです、、、
なんだろう、小粋な、でもセコいところがある豊臣秀吉みたいな感じですね。
袋から取り出すときに勝手に電源が入っていることがあるというのもまさにそれで、
待ってました、と言わんばかりな表情が伺えます。
熱しやすくも醒めやすい、走るからには全力で、でも飛ばしすぎてすぐにダウンする、
今となってはあまり見受けられないやうな
朴訥で一途な気質を備えているモデルと言っても過言ではないでしょう。
以上は機能の美点についてお話しましたが、次は肝心のデザインについて。
待っていましたね。
やはりデザインという感覚的で美学的な哲学的でもあるファクターを追求しないと、
このカメラの初々しくも華々しいセックスアピールについてはなかなか理解されないことだろうと私も思います。
案外厚みがありずっしりとした構築性やハンドグリップの堅苦しさは、
軽快で馴れ馴れしい操作はあくまでもされたくないというこのキャラクターを象徴しているようでもあります。
テーブルなんかに置いたときの音がまたどっしりとしていて
質実剛健と言うかものすごく頑丈そうでもあるのです。
さらに、このシルバーの外観は金属ではないのです、実はプラスティックなのです。
ガンメタっぽく塗装を施してあり
しかもカシオのようにすぐに拭き傷ができないようになっているところがまた小粋でずる賢いところですね。
液晶は透き通っていないスモッグの青空という感じであります、
そこにはおそらく、都会は環境ホルモンに汚染されている、
その現実を忠実に再現した液晶画面であるのだ、というメタファーが含まれているのでしょう。
画像表示もカシオクラスの鈍足感を備えていてそこには
あくまでも媚びるものか、
命令に迅速に反応するようなあたかも権力に媚びたような真似をするものか、
という主張があるようにも感じられます。
一枚画像を消去するのに反応の鈍いわがままで分かりづらいボタンを
4回も迷いながら押すことができてこちらは愉しいですね。
ネームも全画面消去でまた00001からなのでUSB転送時に
危うく前の画像を消してしまいそうになるという危機感も実は、
平和ボケした人間になにかしらの疑問を投げかけるように計算された
恋の上級テクニックのようなものでありましょう。
毎回々々一枚々々に名前を付ける癖がついたら、もう、このカメラの虜ですね。
また、パソコンに画像を転送したら液晶で見るよりも暗すぎて鬱になることも忘れてはならない点でしょう。
露光が滅茶苦茶で、賢いのかバカチョンなのかわからないこの子ったら!という感じがしてかわいいですね。
最近機械を買ってそんな風にあからさまに失敗作っ!という物がなくなってきた。
特に一流のメーカーの中では。
懐かしくも久しぶりに「機械は生き物である」そういうことを実感した想いです。
イタいけれどうれしい!そんな風に感傷してしまう、今日この頃です。
ドットが大きくて強そうだ。
状態の悪いへたれた箱の表にはクイックレスポンスと書いてある。
どのボタンを押した時にもたった数秒の考察で次の行動が実践される、
その機転のよさがすっきりと表現されていますね。
欲望をかなえると方向を見失う傾向にあるのが人間だから
ストイックな色合いを醸し出そうとしている。
テカテカしているのは、心がボヤけておらず身体がみっちりとしているから。