高校倫理の教科書は楽しい。ぜんぶ詰まっている。専門的で難解な本を読むよりもまず概論から。 儒教の思想 【克己復礼】 『論語』によると、「君子は、だれに対しても広く公平な心で和合しながらも定見をもっているのである。小人は、付和雷同しながらも、心の底から和合することがない。」 たいせつなことは、私欲をおさえて(克己)、正しい社会生活の秩序を守ること(復礼)である。 小人は、逆境に耐えることができない。しばらくは耐え忍んでも、まもなく苦しまぎれに悪いことをはじめる。また、順境にあって幸福を楽しむこともできない。はじめは、自制を慎んでいるが、やがておごりたかぶって、自分を見失う。ただ君子だけが、幸運のときも、不運のときも、超然として正しい社会生活をおこなうことができる。君子は、このようにして、自分を欺かず(忠)、人をおもいやり(恕)、他人を欺かず(信)、自分にあたえられた天性を修養によって完全に実現していくのである。利欲によって動くのではなく、いつも天地に恥じない正義の大道を歩むのである。したがって、君子は、一芸一能に秀でることで満足するのではなく、人間の基本としての正しい人生観を確立し、ものごとに惑わず、天命を知って、天地自然の秩序を楽しむことができる。 |